こんにちは、ひすまる(@Hys22978629)です
今日は鉄道現業職では採用試験から必須の身体検査と適性検査について書いていきたいと思います。

・鉄道現業に興味のある人向け
・興味というより就職したい人
・鉄道係員はこんなことやってます
※なお、この記事で記載する省令関係は電子政府の総合窓口より引用しております。
ちなみにこれらの検査は、現役で働いている我々はもちろん、鉄道会社の現業職(主に駅→車掌→運転士)コースでの採用試験でも必ず行われる検査です。もし基準に満たない人を採用してしまうと、将来乗務員に登用できず無駄な採用になってしまうため、採用段階で検査をしておくわけです。
では、適性検査のお話始めます
目次
医学適性検査
医学適正検査(医適)とは、鉄道独特の身体検査です。
通常我々のような夜勤をする仕事では年に2回の定期健康診断が法律で義務付けられています(労働安全衛生法第66条)
そのうち1回は医適と呼ばれる検査も兼ねており、鉄道現業に従事できる基準を満たしているかをチェックしています。
動力車操縦者(=運転士)運転免許に関する省令より、必要な身体検査については以下の通りです。車掌・駅係員(ホーム立ち番など運転に関係する人)でもほぼ同じですね。
項目 | 基準 |
視機能 |
一 視力(矯正視力を含む。)が両眼で一・〇以上、かつ、一眼でそれぞれ〇・七以上であること。
二 正常な両眼視機能を有すること。
三 正常な視野を有すること。
四 色覚が正常であること。
|
聴力 | 各耳とも五メートル以上の距離でささやく言葉を明らかに聴取できること。 |
疾病及び身体機能の障害の有無 | 心臓疾患、神経及び精神の疾患、眼疾患、運動機能の障害、言語機能の障害その他の動力車の操縦に支障を及ぼすと認められる疾病又は身体機能の障害がないこと。 |
中毒 | アルコール中毒、麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないこと。 |
まぁぶっちゃけ言えば医適とはいっても、検査方法は通常の健康診断と同じなんですけどね。。
尿検査に始まり、身長体重、視力、聴力、血圧と何年かおきに心電図やレントゲン検査、あとは保健師さんとお医者さんの問診が行われます。
運転士の登用試験の時には脳波なんかも測られたっけ…。
この中で意外と盲点なのが聴力です。
特に高齢の運転士は聴力にひっかる人がたまに出ます。今はヘッドホンやイヤホンでガンガン音楽を聴いたりすることも多いですからね…。あんまり極端な音量で聴いたりしなければ大丈夫なんでしょうけど。。
聴力は視力と違って矯正がしにくいものです。視力は眼鏡やコンタクトで矯正できますし、よく視力回復本なんかも出版されています。
でも、聴力矯正なんて話はなかなか聞きませんね。なので、鉄道現業を目指す人はイヤホン・ヘッドホンでの大音量は控えることをオススメします。

・聴力が意外と盲点、イヤホン等で大音量は避けよう
・視力は勿論必須。矯正で良いので、検査前は眼科でチェックしてもらおう
運転適性検査
適性検査は、クレペリン検査、反応速度検査その他の検査により、動力車の操縦に関して必要な適性を検査するために行う。
…と、省令で定められているわけですが、何種類かあるので順にご紹介。
クレペリン検査
もしかしたら聞いたことがある方もいるかもしれません、このクレペリン検査。
どんな内容かというと…

このように一桁の数字(3以上)が横に並べられていて、これが何行もあります。
一番上の行の左上からスタートし、隣り合った数字を足していくだけ。答えの一の位の数字を間に記入していきます。
順に見ていくと、最初は4と5なので9、次の5と8は13なので一の位の3…という要領です。

実際は鉛筆で記入していきますが、便宜上赤で書いてます
このように左から順にひたすら足し算を続けていきます。
定められた時間が経過すると試験官が「次」といいます。その合図で下の行へ移動し、また左端から計算をします。
この作業を15分→5分休憩→15分と繰り返します。

検査で見られているのは「作業量の変化」「作業量」「正確性」です。
「作業量の変化」…普通にやっていると、行により作業量(足し算ができた数)が変化します。この変化から、受験者の性格や作業の傾向を把握する目的です。
「作業量」「正確性」…単純な足し算をするだけなので、1行(1分)に5個しかできていない、なんて結果が出たら「能力に問題アリ」とみなされてしまいます。また、計算違いがあまりにも多すぎるのもも「能力に問題アリ」です。(多少は全然ok)普通にやっていれば、このふたつで引っかかることはまず無いものですが…。
このクレペリン検査、実は「作業量の変化」について理想の形があります。
ネット上では調整法なんかもググれば出てきます。出てきます…が、経験者としては推奨できるものではありません。
まず第一に、鉄道は乗客の命を預かる仕事ですから、素直に受けて適性の無い者にやらせるべきではありません。
また、クレペリン検査は想像以上にハードな検査です。細かい数字ばかり見ているとすぐにゲシュタルト崩壊の感覚が襲ってきて、数字がわけわからなくなってきます。計算しては答えを書き込むのを連続しているため、手も痛くなり、すぐに震えが来て字を書くのにも苦労します。
そんな状態で調整しようにも、下手な結果になるのがオチなので、目の前の計算に集中して、丁寧正確に回答していくことに集中するべきです。

ちなみにこのクレペリン検査、入社しても継続的に受けることになります。
乗務員登用試験の時はもちろん、乗務員になってからも3年に1度は受ける決まりになっています(余裕を持って2年半くらいのサイクルで受けています)
自動車の運転免許と同じで、更新が必要なのです。
私としてはこの検査を受けることが一番の憂鬱です笑
特に仕事終わりに行くと本当にわけがわからなくなります
反応速度検査
反応速度検査は、緑・黄・赤の3色ランプの前に座り、ランプが点いたところと同じ色のボタンを押すだけの検査です。
光ったものを正確に押すことだけなので難しいものではありませんが、それでも焦りや緊張があると押し間違えがあるのが人間の恐ろしいところです。。
注意配分
注意配分は、7×7のマス目の中に書かれている不規則な数字を順番に指していき、その所要時間をはかるものです。

真ん中の0からスタートし、1,2,3…と順番に探して指で指しながら答えていきます。
49マスで0からスタートなので最後は48まで。簡単そうに見えて思ったよりもかなり時間はかかりますね。目の前に試験官と向かい合わせでやる状況もプレッシャーになります
以上、運転適性検査をご紹介しました。
クレペリン検査については3年に1回、反応速度検査と注意配分検査は乗務員登用時に私も経験しております。
安全を守る仕事だからちゃんと検査してパスしていないと仕事にならないのです。

まとめ
以上が鉄道現業に必要な医適・運適のお話でした。
鉄道業界志望の学生さんには、特にこれといった対策もアドバイスできませんが、検査当日に万全の体調で臨むことが唯一にして最大の対策かと思います。
改めて自分の通ってきた検査を振り返ると、健康に産んでくれた親に感謝感謝
それでは皆様、今日もご安全に!
