こんにちは、ひすまる(@Hys22978629)です。

さて、今日のネタは過密ダイヤ。
ラッシュ時には約2分間隔で運転され
1時間に25~30本の列車が運転されている路線は数多くあります。
なぜ、これほどの過密ダイヤでも安全に運行ができるのでしょうか?
1つ1つ見ていくと様々な設備や工夫等々ありますが
今回の記事では信号機の工夫にスポットを当てて見ていくことといたしましょう。

目次
信号保安システム『閉塞』
まずは鉄道安全の基本となる『閉塞(へいそく)』からいきましょう。
閉塞…広義では
閉じて塞ぐこと、出入りができなくなること
とあります。
不透明な未来に対して、閉塞感という表現もありますね。
鉄道で使われる場合の『閉塞』は
・列車同士の衝突を防ぐ手法のひとつ
・線路を一定区間に区切り、一区間に1列車しか入れないようにすることで安全を確保する
という意味になります。
鉄の車輪に鉄のレールで走る鉄道車両は自動車と比べてはるかに止まるまでの距離が必要なので
前方に別の車両を発見してからブレーキをかけていたのでは衝突を防ぐことができません。
究極に衝突を防ごうとすれば、一線区に一列車だけを走らせれば良いことになりますが
それでは例えば一周約59分の山手線は59分に1本しか列車が来ない路線となってしまい
利便性って何?という状況になってしまいます。
閉塞を図解
それではまず鉄道における『閉塞』の仕組みから。

先に説明した通り、線路を一定区間に区切り(閉塞区間といいます)
その境界に信号機を設置します。

列車が区切った閉塞区間に入ってきました。
区間の入口の信号機を赤(停止)にして、他の列車が入って来られないようにします。

列車は進み、区切った最初の閉塞区間を抜けました。
信号現示を黄色(注意)とし、他の列車が入って来れるようにします。


黄色(注意)信号には速度制限がかかっており(概ね45km/hの線区が多いです)
次の赤(停止)信号までに確実に止まれるようにしています。

列車は更に進み、もうひとつの閉塞区間を通り抜けました。
すると、それぞれ信号が変化します。
基本的にはこの流れで信号は列車の位置に対応するかたちで変化していきます。
道路の信号とは変化のしかたが逆ですね。
(青→赤→黄→青)
都市部の過密ダイヤ区間では…
都市部の路線では、過密ダイヤへと対応するために、この閉塞区間を短く区切っています。
(短くすればするほど、列車の本数を増やせるからです)
短い閉塞区間だと、先に紹介した3色の信号現示(3灯式)だけではブレーキが間に合わず
赤信号手前で確実に列車を止めることができなくなるため
4灯式や5灯式の信号機を使用し、制限速度を細かく決めることで赤信号までに
確実に列車を止めることができるようにしています。
点灯している色の組み合わせ(信号現示)によってその先の閉塞区間の制限速度を示す
同じ信号でも、ここが道路の信号との大きな違いとなります。
過密ダイヤを可能にする信号設備
それでは続いて、過密ダイヤを可能にする様々な設備の中から
特に信号機へスポットを当てて見ていきたいと思います。
ダイヤ上のネックは停車駅
列車の運転間隔を詰めるうえでネックとなるのは停車駅です。
特にターミナル駅や乗換駅など乗降の多い駅では
どうしても停車時間が長くなってしまいます。

・駅の手前からブレーキをかけて減速
・停車し乗客の乗り降り
・乗り降りが終わりドア閉めから発車し加速
運転間隔を詰めようとすればするほど、どうしても停車駅がネックになってしまう…
駅への停車から発車までのプロセスを考えていただくとお分かりになるかと思います。
特に乗降の多い乗換駅なんかでは停車時間が長くなってしまい
後続の列車がホームのすぐ手前まで迫ってきて

なんて状況になることもしばしば…。
読んで下さる皆様も、駅手前のノロノロ運転にイライラした経験がある方も多いのでは…?
これ、どうやって解決していくのか…。
解決策①ホームと線路を増やす
イメージはこのような感じです

線路とホームを増やす!
(土地とお金が必要)
2つのホームを使うことができれば、交互に列車を到着と発車させることができます。

同一ホームで両側に線路を敷けば、ホームの移動という乗客の負担もありません。
しかし現実的に考えて、都市部にそんな土地は簡単には用意できません。
地形的に無理な場合もありますし、多額の建設費だってかかります。
なので、実際に交互発着を行っている駅は限られます。
解決策②ホームの中間に信号機を設置する
今回の本題でもあり現実的な工夫です。
首都圏の鉄道を利用される方であれば、ホームの真ん中付近に信号機が設置されているのを見たことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ホームの真ん中に信号機を設置し、先述した閉塞区間を分割する。
どれほど有効な工夫なのか、図で見ていきましょう。

まずはホームの真ん中付近に信号機が無く、閉塞区間を分割していない場合。

先行の列車が発車し、閉塞区間を完全に抜けないと後続は駅へ進入できません。
列車の一編成の長さは、10両編成であれば約200メートルにもなります。
(在来線の車両は1両20メートルが多いです)
そのため、発車してから編成の後ろが閉塞区間を完全に抜けるまで、どうしても時間がかかります。
それでは次はホーム真ん中付近に信号機を設置し閉塞区間を分割した場合。

駅に停車中はもちろん後続列車は進入できません。
しかし…

先行列車が発車し、ホームの半分(信号機の設置箇所)を過ぎると
後続列車に対する信号が開通し、ホーム途中までは進入できるようになります。

先行列車は発車後どんどん加速していくため、その後すぐにホームを完全に抜け出し
後続列車は駅に完全に進入できるようになります。

ほんのわずか、たったこれだけの差ではありますが
列車間隔を詰め、運転本数を増やす効果的な工夫であることがお分かり頂けると思います。

良いことばかりじゃない、欠点も…
ホームの真ん中付近に信号機を設置し、閉塞区間を分割するメリットは
よーくお分かりいただけたかと思います。
しかし、時としてメリットばかりではなく…
オーバーランの対処が大変
この閉塞区間を分割する方法。
重大な欠点はオーバーランしたときのことです。
編成の最後尾が信号機を過ぎてしまうくらいのオーバーラン。
さっさとバックしてドアを開けたいと考えるところですが
実際にバックしてしまうとどうなるでしょう。


編成の最後尾が信号を超えた時点で、後ろ(駅手前)の信号機の現示が変化します。
後続列車の運転士は当然信号に従ってホームへと進入していきますので
この状態でバックしてしまうと衝突する恐れがあるのです。
なので、バックはできないのです。
超えちゃったら問答無用にバックできないのか
ホーム中間の信号機を超えるほどのオーバーランをしてしまった。。
まずは列車の最後尾に乗務する車掌が信号機を超えたかの確認をします。
不幸にも超えてしまった場合、先述の通りそのままバックすると衝突の恐れがあります。
対処①指令へ許可を取って下げる
対処その1、列車の運行を司る指令所へ連絡し、指示を仰ぎます。
後続列車がすぐ近くまで接近していない場合、後続列車を駅手前に一旦停車させ
衝突の可能性を排除してバックさせることがあります。

それでもダメなときはある
さて、後続列車がすぐ後に来ていたらどうなるか…
こうなるとバックすることはできません。
下車予定だったお客様には次の駅で反対方向の列車に乗り換えて折り返してもらうことになります。
(次の駅で反対方向の列車を止めておいてすぐに乗り換えられるようにすることが多い)

まとめ
このように、ホーム中間付近に信号機を設置し、閉塞区間を分割することは列車本数を増やす工夫としてはとても有効ではありますが
オーバーランの際にバックできなくなる恐れがある欠点も持ち合わせています。
・列車本数を増やす工夫のひとつがホーム中間に信号機を設置すること
・わずか1本の信号機、それでも効果は絶大
・デメリットはオーバーランの対処
まぁオーバーランの対処については


と言いたいところですがね。

停車駅とその前後が運転本数を増やすネックとなりますが
このような工夫で各社局は少しでも本数を増やす努力をしています。

それでは今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
鉄道に関する知られてなさそうな解説記事、結構楽しく書けるかも。
