こんにちは、ひすまる(@Hys22978629)です。
乗り物ニュースでこんな記事を見ました。
電車の運転台後ろから前方の景色を見ている時に、分岐した先がすぐ行き止まりになっている線路を見かけたことはありませんか?

この分岐してすぐに行き止まりになっている線路
これを安全側線といいます。
目次
安全側線とは

このような単線区間(1つの線路で上下両方向の列車が行き来する)での行き違いの場合、どちらかの列車が何らかの理由で停止位置を行きすぎてしまうと、正面衝突の恐れがあります。

そこで合流する前に線路を分岐させ、せめて対向列車との正面衝突は避けようという設備が安全側線になります。

また、複線区間(上下で使用線路が分かれている)でも、待避線などの合流部分に設置されることもあります。

複線では信号の見誤り(隣の線路に対する信号を、自分が行って良いと間違える)による衝突を防ぎます。
仕組みとしては、信号機が停止現示(赤信号)のときは安全側線側にポイントが開き

進行を指示する信号(赤以外)の場合は本線に入るように開通します

これにより、もし赤信号を無視(あるいは何らかの理由で停まれなかった)した場合でも、行き止まり側に突っ込んで停車することで、正面衝突という最悪の事態を防ぎます。

他の列車と衝突事故を起こすよりも、行き過ぎてしまった列車だけを側線に突っ込ませた方がトータルの被害は少ないだろうという発想ですね。
この安全側線、特に単線区間でダイヤ上大きな役割を果たします。
駅への同時進入、進出は原則禁止
【第105条】二以上の列車が停車場に進入し、又は停車場から進出する場合において、過走により相互にその進路を支障するおそれがあるときは、これらの列車を同時に運転してはならない

これが何を言わんかとしているかというと
行き過ぎると本線を支障して、ぶつかる可能性がある場合は駅に複数列車を同時に入れたりしちゃいけないよ、ということです。
そんな時はどうやって単線区間で上下の行き違いをするかというと


という手順を踏んで行き違いをさせます。
メリットとしては、片方の列車は駅手前で停車しているので、仮に駅進入の列車がオーバーランしたとしても衝突の可能性を下げられること
万が一衝突したとしても、片方は止まっているので、動いてる同士の衝突よりもダメージが少なく済むことです。
一方デメリットとして、ダイヤ上の制約が大きくなります。
片方を停止させるため、駅到着まで時間がかかり、列車本数の多い区間には向かないやり方になります。

このデメリットを解消するためには、条文で禁止されている同時進入を可能にしなければなりません。
こと鉄道には、『ただし〜』といったものが多く、この場合にもある条件を満たすことで同時に進入進出が可能となる方法がありますので以下ご紹介。
同時進入可能、その方法は?
場内信号機に警戒信号を現示できる場合

黄色が2つ点灯する警戒信号
場内信号機(駅への進入の可否を現示する信号)にこの警戒信号を現示できれば同時進入可能です。
警戒信号は、速度25km/h以下で進めということを指示します。
このような低速であれば、オーバーラン の可能性は少なくなること、仮に行き過ぎたとしても衝突前に止まれるだろうということから、この場合には同時進入が可能となります。
デメリットとしては、低速となるためやはりダイヤ上の制約があり列車本数の多い区間には向かないこと、単線区間にこれほど多数の現示可能な信号機はコスト的に向かないことがあります。
過走余裕距離が100メートル以上確保できる場合

過走余裕距離とは、所定の停止位置からオーバーした場合、対向線路を支障する位置までの距離のことです。
この場合では、所定停止位置をオーバーランしても対向線路を支障するまで100メートル以上の余裕距離を確保できる場合、同時進入が可能となります。
理由としては、100メートル以上確保できれば、大抵の場合そこまでには止まれる可能性が高いからです。
(過去の事例からも、100メートル以内には止まれた場合が多い)
この場合のデメリットは、100メートル以上の余裕を作るために土地が沢山必要となることです。
限られた土地で線路を敷設している際には、この条件を当てはまるのは非常に難しくなります。
安全側線を設けてある場合

そして今回のメイン、安全側線が設けてある場合です。
この場合、既存の設備に少しの分岐を加えることで、ダイヤ上の制約や土地の問題など、他の方法のデメリットを消すことができます。
・極端に速度を下げずに進入できるので、ダイヤの制約が少ない
・進入を想定しない線路なので、土地も少なくて済む
・正面衝突のリスクを避けられる
以上が安全側線のメリット
特に安全側線が機能した例として
石勝線貨物列車脱線事故
(雪でブレーキが効かず止まれなかった)
をはじめ、複数の事故で正面衝突を防いだ事例があります。
一方デメリットも勿論あり
・高速で安全側線に進入した場合、脱線転覆する可能性が高い
・転覆の場合、対向線路を支障して多重事故になる恐れがある
といったことがあり、実際に
三河島事故
(国鉄戦後5大事故)
のような事例もあります。
まとめ
以上が安全側線をはじめ、特に単線区間での列車交換の仕組みについて説明しました。

この他にも、高度な保安装置を使用している場合にも安全側線は省略可能となっており、新しい路線では見られなくなりつつあります。
既存の安全側線は、現在存在する安全設備を撤去することを鉄道会社は嫌うので暫くはそのまま現存するものと思われます。
パッと見、あんなに無駄そうな設備でもこれだけの意味があったのです。


無駄では無かったのだ…
それでは今回はここまでです。最後まで読んで頂きありがとうございました😊
